網膜の病気
網膜格子状変性、網膜裂孔
近視の方に多いのですが、網膜の赤道部から周辺部にかけて、生理的に弱い部位(切手のミシン目のような所)が存在し、そこに硝子体の牽引がかかると網膜に亀裂が入ることがあります。
多いパターンは、軟体動物のウミウシのように長細くて、その中に薄い箇所が点々と存在する場合(円孔・格子状変性)と、馬の蹄鉄のようにU字型の裂け目が存在する場合(馬蹄形裂孔)があります。前者には、穴があいていないSnail trackというナメクジが這った後のような変性もあります。
どちらの場合も、見つけ次第レーザー光凝固治療をしておくほうが良いです。牽引が始まってしまうと、硝子体液が網膜下に入り込み網膜剥離を起こします。そうなる前にレーザーで、網膜が浮き上がらないように抑え込んでおくのです。(当院のZeiss laserを使用します)
糖尿病網膜症
日本人失明原因の第二位として有名な病気です。糖尿病の本体は、末梢組織で血管が酸素不足を生じて、血管瘤を作ることです。単純性網膜症(SDR)では、網膜に点状出血が見られますが、これは毛細血管瘤が赤く見えているのです。
さらに前増殖期(prePDR)に進むと、軟性白斑といって白い雲のような変化が見られます。これは網膜の虚血を表しています。さらに、酸素不足が慢性化して増殖期(PDR)に進むと新生血管が生じます。
組織に酸素を送り込んでやるために発生するのですが、非常にもろく、また硝子体に向かって生えているために硝子体と網膜の界面でずれが生ずると、容易に切れて出血します。この悪循環を断ち切るためには、網膜光凝固をする必要があります。
高血圧網膜症
最近は日本人の塩分摂取量も減ってきたので、高血圧の人も減少傾向にあります。しかし、まだまだ高血圧の人はいて、眼底検査で見つかることも多いようです。
高血圧性変化(H)としては、動脈が細くなる狭小化と、硬化性変化(S)を示す動脈の色調変化があります。さらに重症の高血圧の場合、出血を起こすこともあります。眼底写真を撮れば、すぐに分かる変化なので、当院ではアイドックシステム(目の健康診断)に眼底写真撮影を取り入れています。
加齢性黄斑変性症
最近、日本人にも発症率が増えているので、最もホットな網膜疾患の一つです。日本人失明原因の第四位です。網膜中心部の網膜下に新生血管が出来て、それが不規則な出血を繰り返して黄斑部を破壊してしまう病気です。
原因はまだ分かっていません。治療法としては抗VEGF薬を硝子体中に注射器で投与することが一般化しています。